Ark makes GENOCIDE

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チャプター11 任務

- 任務 -


南極 ロス島マクマード基地

PM 7:11

「エネルギー装填、完了致しました」

「……新世界の始まり。アポカリプス作戦、開始だ。」

「発射カウントダウン…5…4…3……」

 

 

嵐がテンプル騎士団 団長と遭遇する2時間前ーー

 

イギリス ロンドン郊外

ヴォクソール MI6本部

PM 5:23

Trururu.....

ロータスのデスクの内線が鳴る。

"整備士のジェッタです。南極からオートシステムによりディアブロが帰還しました。点検はすぐに済みますので、ご訪問頂いている日本人の方に、まもなく出発できますと伝達願えますでしょうか?"

「……ふむ、わかった。すぐに向かってもらおう。」

ロータスは内線のボタンで通話を終了し、京極の目を見た。

「お聞きの通りです。Rたちが南極から送り還した音速機が戻ったようですので、直ちに京極さんも向かって頂けますか?」

「了解。さすが音速機だな。嵐から連絡は受けていたが、もう出発できるとは。どこに向かえばいい?」

京極は立ち上がり、コートを持ち、扉に向かった。

「地下の格納庫です。扉の外に秘書がいます…案内させましょう」

「何から何まで世話になる。では、例の件、よろしく頼みます…」

 

 

そして、現在ーー

南極 昭和基地

PM 7:26

無人の昭和基地の居住棟に現れたテンプル騎士団 団長エスカレードとの交戦を余儀なくされた嵐は、エスカレードの二刀流から繰り出される熾烈な攻撃に防戦一方の戦いを強いられていた。

両手に携えた剣から飛び交う銃弾と斬撃。

一丁の拳銃で応戦するにはあまりにも荷が重い攻撃量だった。

「どうした…守るだけでは私は倒せないぞ?」

「くそっ…あの厄介な武器をなんとかしねぇと、交わすだけで何にも出来やしねぇ…」

ーーあの武器の特性を逆手に取って反撃できれば…しかしどうやって……

考えを巡らせる嵐に、エスカレードは容赦なく斬撃を見舞ってきた。

「決闘中に考え事とは、ナメられたものだ!」

「しょーがねぇだろ!アンタを倒す算段を立ててんだよ…ジャマすんなって」

「ほう…それなら尚更放ってはおけないな。私はいくら相手に不足があったとしても、手は抜かない主義なのでな」

ーー面倒くせぇ野郎だぜ…ん?あれは…使える!

何かを見つけた嵐は開いていた扉の一室に駆け込んだ。

エスカレードもそれを追うようにすぐさま部屋の中に駆け込んでくる。

ここで仕留めてしまおうと決めたのか、エスカレードは部屋の扉を閉め、ドアノブを切り落とし密室を作り上げた。

「ここで終いだ。こんな密室に入ってしまっては、君にもう逃げ場はない…観念するんだな」

「バーカ。観念するのはアンタのほうだよ」

嵐は窓辺に置いてあった石油ストーブをエスカレードに向けて蹴り飛ばした。

咄嗟にエスカレードは石油ストーブを真っ二つに斬り裂いた…ストーブはまるでモッツァレラチーズのように綺麗に二手に分かれ地に落ちた。

「悪足掻きはそこまでだ。教皇を手に掛けた罪、死して悔い改めよ!」

エスカレードは猛攻の構えを取り、突進してくる。しかし嵐は落ち着いた様子で、エスカレードに向けて数発、銃弾を見舞った。

エスカレードは足を止めることなく、突き進みながら慣れた手捌きで、放たれた銃弾に対して剣を振り下ろし銃弾を斬り裂いた…その瞬間だった。

エスカレードのガードに使用した剣が爆発を起こし、エスカレードは後方へと吹き飛んだ。

「な…なに……どういうことだ、これは…」

甲冑のおかげで命拾いはしたものの、エスカレードの剣を持っていた右腕は噴き飛び、おびただしい量の血液が二の腕から流れ出ている。

「油断しすぎなんだよ、アンタ。そんなハイテクな武器、石油なんかが付着したら火気厳禁に決まってるだろ。それをそんな状態で銃弾なんかガードしたら、そりゃ爆発するでしょーよ」

「ぐっ…剣の力に頼りすぎていた私の傲りか…無念。もはや、これまで…さあ、留めを刺すがいい」

「バーカ。サラブレッドじゃあるまいし、利き腕無くした騎士なんて、もはやただの鉄クズだろうがよ…殺処分するほどの価値もねぇ。そんな趣味もねーし、さっさと国に帰って、手当てしろって…火の手も回ってきてるし、こっちは急いでんの」

嵐の言う通り、先ほどの剣の爆発により、部屋は次第に燃え盛ってきていた。

「な、情けをかけるのか…なんという侮辱…騎士に死に場所を与えぬとは…かくなる上は…」

エスカレードは残った左側の手に持った剣の刃を自身側へと持ち替え、その胸に勢いよく突き刺した。

「あっ!…ったく、なんだよ…もう。死ぬことなんてねぇだろうがよ…馬鹿野郎」

後味が悪そうに呟き、嵐は部屋を出て、急いで美波の元へと戻った。

「嵐ちゃん…さっき爆発音がしたけど、もしかして…」

「ああ、ゾンビが出たから、燃やしてきた。ここまで火の手が来るのも時間の問題だ…さっさと出るぞ!」

「う、嘘!?ホントにゾンビが出たの!?あ、ちょっと!嵐ちゃん、待ってよ!」

嵐は美波の手を掴み、足早に部屋を出ると、さらに駆け出した。

「思いのほか、ゾンビが頑丈でさ…ちょっと強めに爆破させたら、部屋が燃えちまってよ…たぶんこのまま居住棟はもう全部燃えちまいそうな勢いなんだよな…つーか、京極のやつ、おっせーな…墜落とかしてねーだろうな」

「あ、そうだ!ディアブロのアプリで現在地とかわかんないのかな…調べてみる!」

居住棟を急いで出た2人はひとまず、管理棟に戻り、図書室でディアブロのアプリで京極の足取りを探ることにした。

「えっと…あ!現在位置、これだ!……南経69度…ってことは、ディアブロはもうこの近くまで来てるみたい」

「じゃあ、今頃ディアブロの着陸時のGで青ざめてる頃か…ここにいるって教えてやんなきゃならねーし、電話してみよーぜ」

嵐の顔がニヤついている。おそらくはクールな京極がディアブロの容赦ないGに取り乱している様子を電話越しに探ってやろうという魂胆なのだろう。

Trurururu……

「もしもーし?京極?今どこだよ?」

「今、南極の南経69度あたりに着陸したところだ。お前たちはもうマクマード基地に向かってるのか?」

嵐の期待とは裏腹に、京極は至ってクールだった。

しかし、その時だった…。

轟音と共に、図書室の窓ガラスがガタガタと震え始める。

「な、なんだよ…この音…まさか……。京極、今、外だよな?!何か見えないか!?」

「……ミサイルが十数基、上空を通過した…」

「なっ!?くそっ!!!間に合わなかったか!!俺らは昭和基地の管理棟にいる!すぐ近くだから…早く来てくれ!」

「わかった…すぐに向かう」

ーーガチャ

「くっそ!!美波、ミサイルのユーラシア大陸への到達時間、割り出せるか?」

「う、うん!ちょっと待ってて……えっと、あくまで予測だけど…あと2時間と8分…」

「に、2時間…世界崩壊までたったの2時間しかないのか…。ミサイル制御のセキュリティ、解除することでそのまま不発にすることはできねぇかな!?」

「おそらく、ミサイルは全てコンピュータ制御のはずだから、セキュリティを解除して、無効プラグラムを入力できれば…そのまま海に落下させられるはず!」

「セキュリティ解除の計画、京極も加えたプランで練り直そう…」

それから10分ほどが過ぎ、京極が管理棟にやってきた。

 

昭和基地 管理棟

PM 7:53

「おっせーよ!ミサイル到達まで2時間を切った。事は急を要するってのに…」

「オイ、待て待て…俺は置き去りにされた身だぞ…むしろそれはこっちの台詞だ」

「京極さん、本当にごめんなさい…完全に忘れてました」

「み、美波ちゃん…それはそれでダイレクトすぎて傷付く…」

「そんなことより、美波、マクマード潜入のプランを手短に京極に伝えておいてくれ。俺は荷物の準備してくる」

「了解。じゃあ、京極さん……」

美波がノートPCを広げ、マクマード基地の地下図面を見せ京極に説明を始めた。

管理棟を出た嵐が向かった先は…観測棟だった。

観測棟の扉を開けて中に入ると、昭和基地の職員たちや研究員たちが怯えた様子で嵐を見た。

「あーえっと、皆さん、無事…かな?」

「あ、あなたは……?」

「あ、いや?名乗るほどの者でもないんだけど…とりあえず、皆さんを解放しに来ただけなんで、安心してくださーい」

その言葉を聞いた面々は皆、安堵の表情を浮かべ、喜び合った。

見たところ、誰一人怪我人などはなく、本当に被害が出ないように軟禁されていただけなのだと、嵐はエスカレードの騎士道に少し痛み入る思いだった。

ーーあとはユーラシア大陸…時間がない……

 

PM 8:12

「……そんな感じです。どうでしょう?」

説明を終えた美波はノートPCを閉じ、眼鏡を外した。

「嵐が基地の最下層にあるセキュリティのサーバーでデータの差し替えを行い、それと同時進行で俺はそのセキュリティを解除し、ミサイルの無効プラグラムを入力…美波ちゃんは図面を元に、ここに残って俺たちに指示を出す…だな?」

「やれやれ…最悪な1日になりそうだぜ。あっちにどれだけの兵隊がいるかわかんねーけど、きっと俺たちが南極に来ていることはすでにバレている。セキュリティの警備は万全のはずだから、その警備兵を倒しつつ、セキュリティを1つ1つクリアして行かなきゃならねぇ。ちょっと大変だとは思うけど、頑張ってくれよな」

準備を終えて戻って来た嵐も作戦会議に合流していた。

「フッ…そもそもこの人数でユーラシア大陸消滅を阻止しようとしてる時点で無謀な賭けだ…俺に限らず、お前も死力を尽くすほかないだろう…こっちは任せておけ」

「さすが室長ともなると、頼りになるねぇ。それじゃ…時間がない。行こう。表にここの基地の極地仕様のセスナ機を用意しておいたから、京極はそれで空路を進んでロス島のマクマード基地の近くまで行ってから、京極は正面突破、俺はロス海から水中を通って潜入する。OK?」

「了解…急ごう」

「二人とも…気を付けてね…」

二人は管理棟を出て、セスナ機に乗り込み昭和基地を出発した。

美波は再びノートPCを開き、二人に持たせたGPSの信号を元にマクマード基地の様子を確認することにした。

ーーマクマード基地…南極における極地基地の中でも最大級の規模の観測基地。どれだけの敵が潜んでいるか全くの未知数…か。

どこまで続く雪原を眼下に、澄み渡る空を進む京極は一人、今から訪れる絶対的不利な状況に覚悟を決めていた。

嵐は潜入のイメトレでもしているのか、ただただ目を瞑り、珍しく無言を貫いていた。

 

ロス島 マクマード基地

PM 8:21

「将軍、2時の方向から未確認の機体がこよ基地の領空内に近づいてきます!」

「来たか…エスカレードの奴め、しくじったな。総員、戦闘配備!ヤツらはミサイルの無効化に死に物狂いで来るはずだ。何としてでも止めるのだ!ガストラ…アンタたちはどうするんだ?」

「そうだな…ここにいても暇だし、私たちもその"祭り"に参加しようかね」


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