Phantom of Diva

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チャプター14 真実

- 真実 -


もう一眠りしてから、何時間経ったのだろう…上体を起こして辺りを見回すと、テーブルの上に血塗れの弾が乗った小皿があり、そのほかアルコールや錠剤などが散乱している。おそらく、ここについてすぐ、綾乃が俺の手当てをしてくれたのだろう。傷口はまだ激しく痛むが、大事には至らないだろう…綾乃に礼を言わなくては。

「……綾乃?」

綾乃の姿が見当たらない。俺は立ち上がり、ヨタヨタと歩き始める。玄関近くに辿り着いたと同時に、右側にあった扉がこちらに向かって開き、扉の圧力に押し倒される。

「って!」

「…え、あ!ごめん。大丈夫?」

中から湯気と共にバスタオルを巻いた綾乃が顔を覗かせ、俺が倒れているのを見ると、傍に来て上体を起こしてくれた。まだ体から立ち上る湯気と、優しい石鹸の香りが鼻孔をくすぐる。

「覗きに来たの?」

綾乃がくすっと笑みをこぼす。その穏やかな顔は、いつもの派手なアイラインも、マスカラも、チークもない素肌のヌードな表情だった。そして、その愛おしいまでに無垢な表情は、俺のよく知っている“響子”そのものだった。

「ち、ちげーよ…そんなことしたら、また腹から血が噴き出すだろ…。」

「…フフ、どうだか。」

どういうことか、いつもの刺々しい綾乃はどこにもいなかった。こんなに穏やかで自然な表情の綾乃は見たことがない…いや、むしろ、今俺の目の前にいるのは、紛れもなく響子だった。バスタオル一枚という無防備な姿にしてもそうだが、完全に気を許してくれているのだろうか。あまりのギャップに動揺が隠せない。鼓動が忙しく脈打っている…初めて綾乃に出逢った日のことを思い出した。
あの日も同じように、胸が苦しいほどの心臓の高鳴りを感じていた。

――響子…。

気が付くと、綾乃を強く抱き締めていた。

「……ずっと…ずっと、こうしたかった…。」

瞳を閉じて感じとる…髪から薫る石鹸とはまた違った、女の子らしい上品なシャンプーの香り、か細い華奢な体躯、シルクのようななめらかな肌の質感…綾乃のすべてが俺を狂わせていた。

「………いいよ…。」

綾乃の透き通るような声がうっすらと耳元で聴こえる。綾乃は俺をここに連れてきた時点で、こうなることを……きっと、予感していたのかもしれない…。

――ごめん、響子…。

 

「ねぇ、嵐……もう気付いているかもしれないけど、私…本当は綾乃じゃないの…。」

「…てことは、やっぱり…響子……なのか…?」

「フフ… “また逢えるから” って言ったでしょ?」

「じゃあ、やっぱり……。」

「嵐…もう苦しまないで。私はいつも貴方のそばにいるから…。」

突然、響子の胸が紅く染まりだした。視線が合うと、それは響子ではなく綾乃だった。

「綾乃ぉぉぉぉっ!!」

叫んでる自分の姿が見えた。

――ゆ、夢…?

縁起でもない夢だったな…綾乃は無事だろうか。不安になって横を見ると、俺の肩に寄りかかって、すやすやと寝息をたてながら綾乃が眠っている。その寝顔を見ていると、愛しさが込み上げてきて、なんとなく尋ねてみたくなった。

「……なぁ、綾乃。俺のこと、好きか…?」

「……嫌いよ。」

「えっ?!」

綾乃は身動き一つしておらず、俺の肩に寄りかかったままだった。呼吸も乱れていない。

――空耳……か?ま…綾乃なら、この状況でも言いかねないな。

俺はほんの束の間のやすらぎの時に、再びゆるやかな眠りについた。


時を同じくして…

PM 10:11
京都府警 取調室

「八坂…みすず…さんですね?」

「…… “みれい” です。」

「失礼。八坂美鈴さん、あなた、先日の地下鉄爆破テロが起きる直前に、四条駅のホームに立っている姿が監視カメラの映像で確認されているけど、どうして爆破に巻き込まれないで、尚且つ、その直後に負傷して倒れていた京極という男の為に救急の連絡だけをして姿を消したのかしら?」

「……えっとぉ、ウチが京極を撃ってぇ、逃げようと思って駅に行きました。でも、なんかやっぱ京極のことが気になったから、駅を出たらぁ、爆破が起きた…みたいな。でぇ、救急車呼んだんはよかったんやけどぉ、もしかしたら ウチが撃ったのバレるかも?!と思たら怖くなったんでぇ、逃げました。」

「……京極を撃った?なぜ?あ、その前に…貴女、京極とは、どういった関係なの?」

「ん〜たぶん、愛人…ですかねぇ。」

粗末な鉄製の机がガタンと大きな音を立てる。八坂と対峙していた鴉が、その複雑な心中を顕すかのように組んでいた脚で机の脚を蹴り、静かに睨み付けている。が、八坂はそれに一切動じず、ただひたすら前を見つめ、怠そうな様子だった。
取調室の鏡の裏側では、男たちが穏やかではない状況に落ち着かない様子で中を見守っている。

「京極って、たしか…真希のコレ…だよな?」

「ええ、たしかそうですよ。羨ましいドロ沼っすね…。」

「……どこがだよ。」

「だって、二人とも美人じゃないっすか…クールビューティーな鴉さんと、小悪魔系の美鈴ちゃん。」

「北山…お前はほんっと青いな。女っつーのはな、ここだよ、ここ!ハート!いくら見た目がよくてもな、あんな鋼の心臓を持ったアイアンメイデンじゃダメなんだよ。」

「宇治川さん、アイアンメイデンって、拷問器具の名前じゃ…」

取調室の中と裏側を繋ぐ扉が開いた。

「部長、アイアンメイデンって何のことかしら。」

「ハ、ハハ…(き、聞かれてた…。)いや、なんだ、ほら、北山が “アイアンメイデンって何すか?” とか聞いてくるもんだから、説明してやってたんだよ。で、どうだ、八坂は何か爆破テロには関係してそうか?」

「どうでしょうね…。あくまで私の推測ですが、もし、彼女の証言が真実ならば、爆破テロ犯は彼女の雇い主である可能性が高いかと。女に甘い京極を、頭のゆるそうな女に撃たせて、その事実を電車ごと八坂も含めて消す…とか。」

「なるほどな…。で、その雇い主っていうのは?」

「実は…彼女はどうやら、ある男から多額の報酬と引き換えに、京極を撃つよう依頼されたそうです。」

「……ある男?」

「ハットにロングコート、幾何学的な竜の模様のTシャツを着ていたそうで、名を“ジョーカー”と名乗ったそうです。さらに、ジョーカーが自分は防衛省の人間で、報酬が防衛省から出るからと話したとか…。」

「ふむ…防衛省……また、JACKALか。ていうか、ハットにロングコート…お前、それって…。」

「……ええ、おそらくは国際指名手配犯の暗殺者 “J” でしょうね。」

「すぐにJACKAL本部に向かって、長官の右京に事実関係を確かめる必要がありそうだな。あと、その話が事実なら、Jが関西に潜伏している可能性が高い。ヤツの捜索も…頼めるか?」

「北山、大阪府警に残ってる一課の人間、全員に至急連絡して頂戴。私達も今から帰るわよ。宇治川部長、看護師の猟奇殺人事件と、失踪中の京極の件、それと八坂の方はお願いしますね。」

鴉は椅子に掛けていたコートを手に取り、北山と共に取調室を出て行った。

 

11月27日(金)
AM 9:23

翌朝、目が覚めると、肩に寄りかかっていたはずの綾乃の頭はなかった…が、布団の中が妙に膨らみ上がっている。

――綾乃?

あまりに不自然な布団の膨らみに、俺は思いきって布団をひっぺ返した。

「……こっ、これは。」

布団の中から現れたのは、この世のものとは思えないほどの、頭でっかちでアンバランスな重心を持った猫…のハリボテ人形だった。

――猫……だよな、これ。え、ナニコレ…全く意味が解らないんですけどー綾乃さーん?!(=Д=;)

俺は混乱した。一夜のうちに、綾乃がハリボテ猫に入れ替わったのか、もしくは重症だったが故に、ずっとハリボテ猫を綾乃と勘違いしてワンナイト・ラブしたのか…いや、さすがに後者はあり得ないだろう。また昨日みたいにシャワーを浴びているだけかもしれない。とりあえず、このハリボテのニャンニャンは置いておいて、綾乃を探すとするか。
しかし、起き上がって、まず視界に飛び込んできたのは、綾乃の姿ではなく、テーブルの上に置かれた一枚の紙切れだった。恐る恐る、その紙切れに手を伸ばし、内容を確認する。

      “嵐、ごめん…先に出ます。
       きっとその状態じゃ、外に出ても命を落としかねない。
       京都府警に戻って、桂エリザベスと伏見、貴船の件を調べてみるから。
       それまで待ってて。また連絡します。

綾乃”      

――綾乃のやつ…一人で大丈夫なのかよ。

 

同時刻
京都府警 捜査一課

久々に戻った府警は、皆、出払っているのか、閑散としていた。桂エリザベスの調書を見れば、嵐の冤罪について、何か解るかもしれない。すると、扉が開いて中年の男がハンカチで手を拭きながら入ってきた。

「…宇治川部長!」

「…ん?おぉ、綾乃じゃないか!久し振りだな。お前たしか、NYで追っていた麻薬密売のホシが防衛省内にいるとかで、潜入捜査中だったよな…終わったのか?」

「いえ、それはまだ…。今日来たのは別件で…大阪府警の2名が殺害された例の事件…少し調べたいことがあって…。」

宇治川の眉間にシワが寄る。

「その件か…たしか、同じ現場で、桂の身柄を確保したそうだな。それにしても、悼ましいな…まだ若いのに。」

心から悼んでいる様子が伺える…どうやら、この人は何も知らないのだろう。今ここで、事実を打ち明けてみようか…この人なら信用できる。

「実は…嵐が二人を撃ったのは……」

事実を隠蔽するかのように、話を遮り私の携帯が鳴り響いた。

「…すみません。失礼します。」

ピッ

“よぉ、俺だよ、俺。ジョーカー。あのさぁ…ちょっと不思議な噂を耳にしてね。目当ての男なんだけどさぁ…なんだか仲良くしてるみたいじゃない。ホテルに行ったんだって?ヘヘヘ…ヤッたの?”

「……それで?」

“あれあれぇ…開き直っちゃうんだ〜なんか、大人になったねぇ。これも愛のチカラってヤツなのかな?クックックッ。”

プツッ

相変わらず…いや、前にも増して不愉快な奴。なんであんな奴に連絡先を教えてしまったのか…後悔しかない。

Trururu...

ピッ

「何?しつこいわね。用があるなら、用件だけ言ってくれない?」

“怒んないでよ〜ちょっとした可愛い冗談じゃん。じゃあ、本題な。お前が寝た男のとっておきの秘密、教えてやるよ…。しーかーも。今ならもれなく、嵐が警視庁と防衛省から掛けられてる容疑の疑いを晴らす決定的な証拠も付いてくるぜぇ?どうよ?1時間後に、大阪城公園の市民の森で待っててやるよ。5分過ぎたら帰っちゃうから、宜しくねぇ。”

プツッ…

嵐の秘密と冤罪を晴らす証拠?本当にそんなものが存在するの?解らない…でも、実在するなら一番手っ取り早い解決策…あのクソ野郎と会って、私一人がほんの少しイヤな思いをすればいいだけの話。迷うことはない…会ってみよう。

「……やの、綾乃?」

しばらく呼び掛けられていて…宇治川部長の声がようやく私の耳に届いた。

「あ、はい。」

「どうした?大丈夫か?顔色が優れないみたいだが。」

「すみません…大丈夫です。部長…私、ちょっと出ます。話はまた戻ってからさせてください。」

「お、おぉ…そうか。わかった。何か解らんが、あんまり無茶はするなよ。」

この人の懐の広さは時折、亡くなったパパを思い出させる。NYでジャーナリストだったパパ。真実をひたすら求め、追っていた事件に巻き込まれて他界したパパ。そんなパパの無念を晴らす為、私は刑事になったんだから…。好きな人ひとりの真実くらい見つけ出せなくて、刑事なんか務まらない。彼のために大阪城公園に行こう…。

京都府警を出て、アプリリアに跨がる。グリップをレッドゾーンまで捻れば、国道1号線を抜けて高速に乗って…そうすれば、余裕で間に合うはず…。

 

大阪城公園京橋口前
AM 11:49

(ジョーカーとの約束の時間まで残り11分)

――たしか、待ち合わせ場所は市民の森…ここからだとけっこう距離があるかも…。

アプリリアを降りて、古の橋を渡り、目的の場所へ駆け出す。晴天の昼前とあって、人通りが多い。お弁当を広げるOL、散歩する老夫婦、人と人の間を縫って駆け抜ける。街中とは思えないほどの巨大な森へと入り、辺りを見回す。

――いた…。

ジョーカーが公衆電話にもたれ掛かって立っている。

「すごいじゃぁん。ちゃんと時間通りに来るなんてさ。ちょっとビックリしたよぉ。」

「はぁはぁ…証拠は。」

コイツの話を聞いてる時間はない。今、ホテルにエージェント達が踏み込んできたら、嵐は間違いなく、もたない…。

「相変わらず冷たいねぇ…そんな焦らなくても、ゆっくりお話ししようぜぇ?」

「急いでるの。早くして。」

人通りさえなければ、脅してでも急かしたけれど…さすがにこれだけ人通りがある中、白昼堂々銃を構える訳にはいかない。

「しょーがねぇなぁ…じゃあ、とりあえず、こっちおいでよ。ここじゃさすがに目立つからさ。息も切らしてるし、ベンチに座ってさ、話そうよ。」

やむを得ない…それくらいの譲歩は受けることにした。ジョーカーの後についていき、近くのベンチに腰掛ける。

「何から話そうかなぁ…俺、こー見えて、何でも知ってるからさぁ。」

「……じゃあ、嵐の刑事殺しの疑いを晴らす証拠っていうのを見せて。」

秘密なんて、誰にだってあることだし、今、別に第三者の口から知る必要なんてないもの。証拠を受け取ったら、そのままこの場を離れてホテルに戻ろう…。

「よーし、じゃあ、嵐の秘密から話そっかな。ごめんね、天の邪鬼で…へへへ。」

そうだった…コイツはそういうヤツだった…真面目に答えるんじゃなかった。後悔を滲ませながら、私はジョーカーを睨み付けた。

「いいね、いいね、その眼。今からの話にピッタリな眼だよ。」

今からの話にピッタリ?意味が解らない。一体、何を話すつもりなんだろ、この男は。

「最初に会った時に、俺、言ったよなぁ?嵐が綾乃チャンの探してる男だってことは。」

「……そうね。でも、それは何かの間違い。彼が私の探してる人物なハズがない。」

……とは言ったものの、嵐は “響子” と付き合っていた。このまま私は100%、嵐を信頼してしまっていいのだろうか。そんな不安がジョーカーの言葉で、より鮮明に深まっていくような気がした。

「なるほど…嵐にベタ惚れだねぇ。羨ましいやら羨ましいやら。じゃあ、皮肉だけど面白い事実を教えてやるよ…これを見てもまだ、そんな寝言が言ってられるかな…?ちなみに、この嵐の横に写ってる男…こいつも知ってるよな?こいつの名前は……へへへ。」

 

一方、嵐の待つホテルでは…

――綾乃のヤツ、いつ頃戻るんだろ。ここでじっと待ってるのも焦れったいな。かと言って、どこに行きゃあいいかもわかんねーし…あ゛ぁ!!

髪を掻きむしり、煙草に火を点ける。落ち着かないこの状況をどう乗り切るか、考えれば考えるほど、不安が募る。そこで思い出した。

――そうだ。もう一度、京極に連絡してみっか。

Trururu...

ピッ

――おっ!繋がった!?

「もしもし!京極?今どこだよ?!」

「……誰だ、テメェ。」

――あれ…なにこの反応。

「誰って、俺だよ!嵐!ケータイ、バグったのか?ずっと連絡してたのに繋がらねーしよ!」

「……あ…らし…だと?ハハッ!あーお前か!悪い悪い!お前、大変なことになってるな。指名手配とかウケるぜ。で、今どこだよ?」

「え、いや…あの…どこって…あぁ!そう!京都駅!京都駅にいるんだけどさ…今から駅ビルの屋上に来てくれないか?話したいことが山ほどあるんだ。」

「駅ビルの屋上な。フッ、オーケー。着いたら連絡する。逃げんなよ…じゃあな。」

プツッ

――京極…なんか変なテンションだったな…ま、いっか…無事みたいだし。

こうしちゃいられない…京都駅に向かうとするか。さすがにラブホにいるとは恥ずかしくて言えなかった。咄嗟に京都駅と言ってしまったが、綾乃がいつ戻るかも解らない…とりあえず入れ違いになるとマズイので、後で連絡しとくか。
俺はジャケットを羽織り、車のキーを手にして部屋を出た。よく考えると、一人でラブホを出るのは、なかなか勇気のいることだとエレベーターの中で気が付いた。

――しまった…これ、誰かに見られでもしたら、クソ恥ずかしいじゃねぇかよ。

誰にも出くわさないことを祈りつつ、エレベーターの扉が開くのを待った。

チーン

開いた扉の前には、若いカップルが待っていた。

――そうそう、俺はこういう星の下に生まれたんだった…やれやれ。つーか、テメェら、笑ってんじゃねーよ!

生き恥を晒しながら、入口を出て、駐車場を歩き回って車を探す。困ったことに、ここに来た記憶がないもので、どこに停めたのかなんて、皆目見当もつかなかった。

――あ、あった…けど、これは……。

俺は青冷めた。車が駐車枠の車線に対して60度くらい傾いて停まっている。もはや、輩停めなどというレベルではなかった。どうやら、自分が意識を失っている間、別の意味でも命の危険に曝されていたらしい…。いや、ここはプラスに考えるか。負傷した俺のために、綾乃が急いでここに連れてきてくれた…これはその代償…なのだと。そんなことよりも先を急ごう。俺は車に乗り込み、シートベルトを締めた…そのタイミングで、俺を引き留めるかのようにケータイが鳴り出した。急いでいたのもあって、そのままの勢いで誰からの着信かも見ずに電話に出た。

「はい、もしもし?」

「……嵐。私だけど…今から別の場所で会えないかな。」

相手は、声にハリを失くした綾乃だった。何か証拠を見つけたのだろうか…それにしては、元気がなさすぎる。まさか…捕まったのだろうか。ということは、これは罠…?

「どしたんだよ、会うのは構わねーけど…なんか元気ないな。何かあったのか?」

「……ううん、何でもない。じゃあ場所だけど…」

「あ、悪い!ちょうど俺も今から京都駅の駅ビルに向かうから、そこに来てくれないか?」

「え、うん、わかった…。」

プツッ

――なんだ…話って……ていうか、綾乃もテンションおかしかったな。オイオイ、みんな、どうしたっていうんだよ。

電話を切り、アクセルを踏み込んでホテルを出た俺は、このあと待ち受ける悲しき運命の悪戯など、全く予想だにしていなかった…。


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