Phantom of Diva

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チャプター12 覚醒

- 覚醒 -


11月26日(木) AM 3:24
大阪府某所

「あんな感じでよかったんだろ?」
「ああ…というよりも、むしろやり過ぎなくらいだ。」
「そりゃないぜ…俺の美学にはそぐわない仕事をわざわざ引き受けてやったのによ。」
「そうだったな…まぁ構わないさ。演出は派手な方が盛り上がる。」
「それよりも…メインディッシュはまだかよ。」
「もうすぐさ…だが、メインの前にとっておきのアンティパストを用意しておいた。
 まずはそれを楽しんでくれ。」
「アンタも焦らすねぇ……了解、ボ・ス。クックックッ…」

 

同日 AM 7:09
京都大学医学部附属病院 南病棟8F

静寂の中、響き渡るヒールの足音。鴉が数名の刑事たちと病院の廊下をぞろぞろと歩いてくる。黄色いテープが貼り巡らされ、封鎖されている病室の前で足を止めた全員が絶句した。
病室内はおぞましいほどの深紅…血飛沫の痕で包まれており、辺り一帯に血液独特の鉄の臭いが立ち込めていた。病室内には6つのベッドが並んでいるが、どれも真っ紅に染まった遺体が横たわっている。皆があまりの衝撃的な光景にたじろいでいる中、鴉だけは鋭い視線で室内を見回していた。そこであることに気がついた。6つのベッドの内、5つはパジャマらしきものを着た患者が寝そべっているのだが、残り1つのベッドには素っ裸の女性が寝添べっている…しかも、様子がおかしい。首から上がないのだ。まるで研ぎ澄まされた鋭利な刃物で切り落としたかのような綺麗な切り口。鴉の背後で若い男の刑事の一人がその遺体に気付いたのか、急に頬を膨らませて、その場から逃げ出すように走り去っていった。

「……随分と過激なお部屋だこと…当分お肉は食べられないわね。」

まるでこの部屋に、血に飢えた野獣でもいたかのような凄惨さだった。捜査で訪れたというのに、誰ひとりとして病室に足を踏み入れようとはせず、拱いていると、鴉たちが歩いてきた廊下の奥から長身に短髪の爽やかな風貌の刑事が走ってきた。

「京都府警、捜査一課の山城です。鴉警部補、この度は遠路はるばるご足労頂き、感謝致します。
 首なしの被害者の身元が判明したので報告に参りました。この病院に勤めている看護士で
 大宮茜、24歳。仕事熱心で優しく、同僚や患者たちから評判のいい看護士だったようです。
 現在、出町柳で一人暮らし、交際相手はなく、人から恨まれるような感じもなかったようです。
 あと、現在、ただ一人行方が判らなくなっているこの病室の患者は “京極” という
 防衛省JACKALの人間だそうで、昨…」

「な、なにそれ…え、意味が解らないんだけど。どういうこと?」

これほどまでにおぞましい光景を目の当たりにしても眉ひとつ動かさなかった鴉が、急に山城の話を割って動揺した面持ちで尋ねた。

「え、えっとぉ……と、言いますと?」
「貴方、防衛省の京極の病室って言ったわよね?私は昨夜まで、京極と一緒にいたのよ…
 病室があること自体、不可解だわ。」
「いや、しかし…記録では昨夜の深夜0時頃に銃らしきもので左胸を撃たれていると救急の
 通報が入り、0時半にはここ、京大病院に救急車にて搬送され、緊急手術と…。
 医師の話ではジャケットの胸ポケットに入っていた固形物のおかげで一命を取り留めたものの、
 手術後はずっとこの部屋で昏睡状態のまま眠っていたそうですよ?」
「撃たれた…あの京極が……そんな。救急車に同行者はいたの?」
「いえ、若い女から救急の連絡があっただけで、同行はしていないようです。」

鴉は眉間に手を当てて思い悩んでいる。

──若い女…か。どうしてもいつも、そうなのかしら…ホント、嫌になるわ。

「それにしても…この有様、強烈ですね。京極とかいう男の仕業なんでしょうか。」
「どうでしょうね。左胸を撃たれ、昏睡状態だった人間にここまで派手な芸当ができるかしら…。
 とりあえず、うちの北山には吐いてばかりいないで、その連絡してきた若い女を
 早急に割り出して事情聴取するよう伝えて頂戴。連絡だけよこして同行していないのが
 引っ掛かるし、何か事件に巻き込まれているのかもしれない。残りのみんなは二手に分かれて、
 京極が撃たれたという現場付近での目撃者の事情聴取と、この病院付近での昨夜の京極の
 目撃情報の聴取。鑑識には首なし被害者に暴行された痕跡がないか確認を急がせて。」
「は、はいっ!」

鴉の指揮官としてのカリスマ性に一瞬茫然とした後、山城は気持ちのいい返事で他の刑事たちを連れて元来た廊下を走っていった。

──京極の仕業?…じゃないなら、一体誰がこんな…それに京極が行方不明だなんて。拉致された?

遠い目をしながら、鴉が手を拱いていると、山城が一人で戻ってきた。

「すみません…少しお耳にお入れしておきたいことが…」

山城が視線を泳がせながら切り出した。

「…なにかしら?」
「昨日、京都市山科区の廃ビルにて、大阪府警の捜査一課、伏見大吾と貴船ありさの両名が
 何者かに殺害されたそうなんです…。現在、山科警察署と防衛省 JACKAL が合同で
 捜査にあたっているのですが…。」

驚きで目を見開く鴉。

「大吾とありさが…?それにどうして JACKAL が捜査に参加してるのよ…。」
「何やら、殺害に関係しているのが JACKAL の暗殺者だと、匿名のタレ込みがあったようで…。」

ピンでアップにしていた鴉の漆黒の髪から、はらりと毛束が落ちて頬にかかる。

「あっちでもこっちでも…一体どうなっているの……JACKALは…。」

 

京極と連絡が取れなくなって3日目の朝を迎えた。京極は頭もキレるし、ああ見えて屈強だから大丈夫だろう…という絶対的な信頼があったから、この3日間でほとんど考えることはなかった。そんなことよりも、今朝の俺はというと…いつもならコーヒー片手にテレビを見てるのだが、今日は綾乃の見舞いに、柄にもなくアイツ──響子のフレンチトーストを作っていた。

──やっぱ見よう見マネじゃ上手くは作れねぇか…ま、男の手料理ってことで。

決して見栄えのよろしくないフレンチトーストをタッパーに入れ、病院へと向かった。今日は綾乃の見舞いを済ませてから、ボス暗殺事件の担当者、大阪府警の女刑事に会いに行く。ボス暗殺、地下鉄爆破テロ…相次ぐ一連の事件には、何か繋がりがあるように思えてならない。
俺は大きく息を吐いた。今日も長い一日になりそうな予感がする。


AM 11:12
京都市立病院 北病棟5F

俺が大判叩いて個室に入れたから、綾乃の病室は分かっていた。病院に着いた俺はほんのりと温かいタッパーを持ち、冷めないようにと早歩きで綾乃の病室に向かった。まだ寝ているかもしれないと思ったので、病室の扉をゆっくりと開けると……綾乃の白く透き通るような背中が目に飛び込んできた。

──あ、やべ…。

「わりぃ!」

慌てて扉を閉めた。ノックするのを忘れてた…とはいえ、昨日の今日で、まさかもう起きて着替えてるとは思いもよらなかった。これまでの調子なら怒鳴り散らされそうなものだが、今のところ何の怒号も聞こえてはこない。気付かれてなかったか?しばらく間をおいて、扉を2回コツいてみる。

「……どうぞ。」

──妙だな。やけにしおらしい返事…。
  いつもだったら、『変態は面会謝絶なんですけど。』とか言いそうなのにな。

恐る恐る扉を開けると、目の前に腕組みした綾乃が立っていた…もちろん服を着た状態で。目が合うと、口が開いているか いないかほどの小さな動きで綾乃が呟いた。

「……アンタ、一回死んどく?」

しおらしい?なんてことはない…よかった、いつも通りだ。

「でも、昨日は……介抱してくれて…その…ありがと。」
「え…あ、ああ、いいよいいよ!気にすんなって!」

意外と素直なとこもあるもんだ…と感心していると、綾乃と出逢って初めて…かもしれない和やかなムードをいたずらに壊すかのように、俺の携帯電話の着信音が鳴った。

──公衆電話から…?

「…もしもし?」
《もしもーし?いやぁ…アンタと話ができるなんて光栄だねぇ。》

──何だこのふざけた野郎は。

「お前、誰だよ…どうしてこの番号を知っている。」
《そんなに怪しむなよ〜俺はアンタのコアなファンさ…。そんなことよりさ、ちょっとテレビ
 見てくれよ〜?》
「……テレビ?」
《そう…今はどのチャンネルでも同じ内容だからさぁ、とりあえず見てごらんよ。》

俺の様子がおかしいことに気付いた綾乃は、携帯を起動させ、ワンセグを開いた。

《ちなみに俺のオススメは、フ●テレビの女子アナが本性エロそうで妄想しやすいから、楽し……》

話の途中で携帯が耳から離れた──綾乃が携帯を持っていた俺の腕を引っ張ったからだ。

「何すんだよ。まだ、電話ではな…し…を……え…?」

綾乃が戦慄した表情で指していた携帯の画面を見て、俺は言葉を失った。解説者が厳しい表情で語っている。

《今回のこの現職の刑事二名が、防衛省の暗殺者に殺害されるという事件、衣笠さんはどのように
 見られていますか?》
《そうですね…警視庁と防衛省、国内外の犯罪の抑止力である2つの国家権力がこういった形で
 繋がるというのは、何か私怨を孕んだ事件のような気がしますね。》
《なるほど。それにしても、未来ある若い刑事がこういった形でこの世を去るのは、誠に遺憾で
 なりません。》
《全くです。プロの暗殺者が相手となる今回のこの事件、これ以上の犠牲を出さない為にも、
 警察側も充分に警戒して逮捕に臨まないと身柄の確保は難しいでしょうね…。》

画面左上のテロップに “防衛省の暗殺者が刑事を惨殺!?” とある。殺害されたのは大阪府警、捜査一課の刑事、伏見大吾(25)と貴船ありさ(24)。
意味がよく解らなかった。どう間違ってそんな誤報道が流れることになったのか。伏見は確かに俺が殺したことに間違いない…だが、それは正当防衛であって、貴船に至っては飛び降り自殺だった。奴らは麻薬密売による指名手配犯の桂エリザベスとグルであり、刑事2名の死亡の経緯こそ説明してはいなかったが、桂は俺が京都府警まで連れて行って引き渡しているし、ある程度、事情を掴めるはずなのだが。たかだか府警レベルの組織が真実を捩曲げて、ここまで大掛かりな情報操作を出来るはずがない。俺は再び携帯を耳にあてがった…が、すでに電話は切れていた。

《それでは、間もなく防衛省 JACKALの右京長官より、緊急指名手配された暗殺者
 嵐容疑者の対応について、ハービスホールから記者会見の模様をお伝え致します。丸山さん?》
《…はい、こちらはハービスホールB2Fの小ホールです。つい先ほど、右京長官がこちらに
 到着したとのことなので、間もなく会見が始まると思われます…あ、出て来られました!》

『皆様、本日はお忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。まずは当局の人間が
 ご迷惑をおかけ致しましたことを深くお詫び申し上げると共に、国家の安全を担うべき責務を
 放棄した嵐に対しまして、大変憤りを感じている次第であります。それ故に、この度の事件は当局も
 不始末の責任を果たすべきだと考えております。警視庁と話し合った結果、当局では
 現時刻を以って、国家反逆の罪を犯した嵐をテロリストと認定し、エージェント10名を
 動員致しました。警視庁と協力し、我々は嵐を発見次第、即刻その場で犯した罪相応の処分を
 遂行します。』

──俺が…テロリスト……?

そんなバカな話があってたまるものか。麻薬密売犯を確保し、警視庁の膿をいち早く潰したたというのに、どうしてそうなるんだ…。もはや、右京長官の言葉は俺の耳には届かなかった。気が付くと会見は終わっており、再びスタジオで解説者が話している。

《それにしても、近頃、京都も物騒ですね…先日の地下鉄爆破テロ、昨夜の看護士の猟奇殺人事件…
 警視庁と防衛省の今後の関係が注目されます。では次のニュースは…》

「嵐…どうするの……?」

綾乃は俺の腕に触れ、不安げな表情の中にどこか申し訳なさを見え隠れさせながら、尋ねてきた。

「ん〜さすがに、ちょっとヤバイかもな…でもまぁ、標的にされたのが俺だけでよかった。
 綾乃も一緒じゃ守りきれねーかもしれないからな。」
「は?自分の身ぐらい自分で守れるし…ていうか、そんなことより、私の捜査に嵐を
 巻き込んでしまって、こうなった訳だし…長官に事情を説明しに行こうよ…私も一緒に行くから。」

たしかに綾乃の言う通りだった。現場検証をしっかり行っていれば、まず俺が犯人扱いされることなどないはず…。

――ただ、警視庁とJACKAL、二つの国家権力の包囲網が敷かれた今、長官に会うことなんて出来るのか…。こんなとき京極がいれば…なんで肝心な時にいねぇんだよ…一体、どこ行っちまったんだ。

 

PM 1:43
ハービスOSAKA B4F
地下駐車場

「よぉ、兄弟。」

私が公用車――お決まりのセンチュリーの前にやってきても、運転手が出てくる気配がなかったので、勝手に後部座席に乗り込むと、無色のアクリル板で仕切られた運転席の向こうから、聞き覚えのある声が響いた。懐かしくも、密かな憎しみを湛えた声は低く、俗に言う“いい声”だった。よく見ると、助手席にも人が乗っている。それに気付いて、ようやく私は自分の身が危険に晒されているのだと察知した。こちら側からハッキリとは見えないが、助手席にいる人影は微動だにしない様子からして、すでに事切れているのだろう。とすると、おそらくはこの車の運転手…。

「何が目的だ……涼介。」
「目的?フッ…目的などないさ。ただ、昔の友人に会いに来ただけのこと。少し付き合えよ。」

運転席の男がこちらを向いた。鋭い眼光にはどこか狂気を漂わせている。

「そうか…なら、“よく来たな” とでも言っておこう。だが、お前の隣にいるゴミは、下っ端とはいえ
 政府の人間だ。その代償は高くつくぞ?」
「ほぉ…また “あの日” のように、俺を脅してパシリにでもする気か?変わらねぇなぁ…お前は。」

皮肉を語るその口元には、一片の笑みもこぼれてはいなかった。それもそのはず… “あの日” 私は一度、この男を葬ったのだから…。

 

2018年 10月
アメリカ合衆国ヴァージニア州

当時、私と涼介はアーリントン郡にあるペンタゴンの軍人だった。アーリントンは北東にあるポトマック川を越えた先がワシントンDCであり、中心都市の一つとして連邦政府に密接な関係のある街だ。しかし、都会という訳でもなく、のどかで過ごしやすいこの街が私は好きだった。4ヶ月前に中東遠征から戻ってきた私と涼介は、常に死と隣り合わせの中東での生活から一変した平穏な毎日に、少し不満を感じていた…そして、今日も仕事終わりにバーで一杯やりながら、くだらない話に華を咲かせていた。

「…ったく、どうしちまったんだ、この世界はよ。平和すぎんだろ…なんかもっと、こう…
 世界征服とかを企むバカはいないものかね…。」
「涼介…お前酔ってるのか?軍人が世界征服する奴を望んでどうする。」

涼介は軍人ではあったが、性格…いや、体質的に少し難のある男だった。人を殺すことに快楽を感じている。軍人であるのをいいことに、敵は容赦なく殺す…中東にいる時は特に酷かった。アメリカによる中東の治安維持を名目とした強制統治が行われ、我々が派遣された訳だが、涼介は残存のテロリストはおろか、反抗する住民は女・子供、関係なく“処刑”していた。米軍で唯一、愛用の日本刀を携えていた涼介は、草木を苅るが如く、住民の首を刎ねた。それがよほど楽しかったのだろう。帰国してからというもの、このような不謹慎なことばかり口にしている。

「まぁ、世界なんざ、俺はどうでもいいんだよ。世の中がもっと悪人だらけになってくれればな。」
「それは仕事熱心なことで。まぁ、毎日こうもトレーニングばかりだと、わからんでもないがな…。」

そして、私はいつかこういう日が来るのではと、日頃思い描いていた予想が的中した。

同年 10月9日

煙草を買いに散歩がてら夜道を歩いていると、涼介が酷く酔った状態で、道行く女性に声をかけている姿を見かけた。よほどその女性が気に入ったのか、嫌がる女性の腕をしっかりと掴み、引き下がろうとしなかった。私は止めるべきかと思い悩んだが、魔がさした…女性が親友に襲われるところを見てみたくなったのだ。案の定、涼介は強引に女性を引きずって行き、近くの草むらに押し倒して、凌辱し始めた。罪の意識を感じながらも、私は興奮し、木陰でじっとその罪深き所業を見守っていた。しかし、途中で気が付いた…涼介が女性に覆いかぶさり、馬乗りになってサバイバルナイフを取り出したことを。我に返った私は、すぐに涼介を止めに入った。

「なにすんだよ!…って、おぉ、仁じゃねぇか。なんだ、お前もこの女とヤリてぇのか?」
「ふざけるな。お前、その娘を殺す気か?」

そう言って、私は倒れている女性へと視線を下した。口から大量の血が漏れている…。

「お前、何したんだよ?!様子がおかしいぞ!」
「え?ああ…ちょっとうるさかったから、舌を噛みちぎってやったのよ。」

私は言葉を失った…舌を切られ、死にかけの人間に、更にナイフを突き立てようとしていた涼介の底なしの狂気に。しかし、このままでは涼介はともかく、涼介の証言次第で傍観していた私もムショ行きになる…なんとか冷静さを取り戻そうと、女性のバッグから財布を取り出した。

「……マリア・エドワーズ? ま、まさか…。」
「どうしたんだよ。知り合いのとこのガキだったりしたか?ハッハッハッ!」
「涼介…こいつはマズイ。連邦議会のジョージ・エドワーズ議長の一人娘だ。」
「ほぉ…議長の娘か。じゃあ、バレる前に燃やしちまおうぜ。」

酒のせいなのか、ただの馬鹿なのか…この際どうでもよかったが、今の涼介には何を言っても話にならないと踏んだ私は、なんとかこの状況を打開すべく、一人で考えに考え抜いた。
そして、この状況を利用して、涼介を意のままに操ることを思いついたのだった…。

「いい方法を思いついた。とりあえず、遺体は私が預かる。お前は帰って
 その血生臭い体をシャワーで洗い流せ。明日、電話する…いいな?」
「なんだよ…その女、まだまだ楽しめるってのによ…わかったよ。」

翌日…約束通り、私は涼介に電話を入れた。

「涼介…昨日の件は私に任せろ。ただ、その代わりと言っては何だが、一つ頼みがあるんだ…。
 決して悪い話じゃない。むしろ、お前にとっては楽しめるゲームだと思う。」
「なんだよ…もったいぶってねぇで、話してみろよ。」

――私から恋人を奪った男…こいつさえいなくなれば……。

「日本に行って、ある男を殺してきてほしい……名前は… “嵐” だ。」


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